堀場国際会議「ユビキタス・メディア アジアからのパラダイム創成」にあわせて、メディアアート展を開催します。 隆盛を見せるアジアのデジタルコンテンツやメディアアートに焦点をあて、日本/アジア的なるテクノロジーと芸術のパラダイムを考察します。 豊かな源流を持つ、きわめてアジア的な科学と芸術の融合を、東京大学/情報学環にかかわるプロジェクト、招待アーティスト作品、学生作品の展示・上映を通して呈示します。
「ユビキタス・メディア アジアからのパラダイム創成」展によせて
メディアアート、またはアート&テクノロジーの企画を手がけはじめた1980年代半ば以降、この領域はさまざまに呼び名を変え、時には巨大な映像の洪水となって私たちの上に降り注ぎ、あるいは目に見えないワイヤード・ワールドの中に収束しつつ世界の境界を超え、再び拡がり、手に触れるとさまざまに姿を変える表現や、掌の中にしっくりと収まるプロダクトとして、または空間内に偏在する存在として移り変わりながら、活況と沈静を繰り返してきたように思う。この領域で特異な役割を果たしてきた日本において、私たちはずっとそれを期待に満ちて注視し、そのただ中にあって享受してきたと言えるだろう。今世紀に入ってついにそれが義務教育化され真に私たちの身近になったとき、西欧の人々にしばしば聞かされた、彼我の「芸術におけるテクノロジー観の違い」が思い浮かんだ。Ars ElectronicaやSIGGRAPHなど国際コンペティション審査の場にあっても、彼らは日本作品の審美的な優位/すぐれた造形性を称えつつ「社会的メッセージが欠けている」という。「テクノロジーを自らの外なる場所に置いてコントロールする自分たちに対して、あなた方はそれを内なるものとして取り込み、魂を込めて一体化する」ともいう。では、日本/アジアにおいて並列・遍在する価値観や多様性といった旧来の連想とは別に、エンターテインメントを含むメディア芸術=漫画やロボット、アニメーションやゲームの源流から、諸外国で再評価の進む戦後日本の前衛、「実験工房」作家らの総合芸術、国際的に活躍する本展参加者たちの作品にみるような、無重力=0(ゼロ)グラビティ領域にまで拡張する先端テクノロジーのヴィークルに乗った日本/アジアの表現から発せられるパラダイムとは、いったい何だろうか? 知覚のメディア史を等距離に往来しつつ、アジア的なるアートとサイエンス/テクノロジーとその行方─言説化が待たれるこの領域について、今回の試みを機にいよいよ答えを見いださねばならない。
森山朋絵
(東京大学大学院情報学環特任准教授/東京都現代美術館学芸員)
作品展示 Art Works ※掲載作品はすべて参考図版です。

河口洋一郎「Gemotion」シリーズ
Yoichiro Kawaguchi, Gemotion Series
「超高精細映像と生命的立体造形が反応する新伝統芸能空間の創出技術」プロジェクトでは、世界に類のない「科学の美の高度な芸術化」を目指し、自然の造形美による生物的CG技術、超高精細映像(スーパーハイビジョン)の表現技術、生き物のように反応するメカニックな立体造形技術の開発を行い、これらと日本の伝統芸能とを有機的に連動させ、『新伝統芸能』として先端化するための空間の創出技術の開発を行う。今回は、東京ドーム「KANSAI SUPER SHOW 太陽の船」やSIGGRAPH2006で注目を集めたCGに反応する凹凸3次元スクリーン「Gemotion Screen」、メカニカル立体造形、超高精細レンチキュラーなどを紹介する。

木本圭子「Imaginary Numbers」
Keiko Kimoto, Imaginary Numbers
私の作品はまずユニバーサルな数式という言語で「システム」を構成し、そこから各メディア(書籍、静止画、映像、オブジェ、etc)へと展開していくというプロセスをとる。多くの時間をシステムの構成に費やすが、このときには視覚的なものは小さなグラフ程度でビジュアル作品に繋がるものはほとんど無く、変動する構造に対する感覚だけが頼りになる。そして、グラフ集ではなく作品にしていく過程に入ってからは、知覚に留まらないよう人間の身体性や記憶をかなり意識する。つまり、作品とは作家のシステムを理解してもらうことではなく、それを契機に観る人それぞれの記憶や身体感覚を含んだ、観る人の心理的な動的システムを駆動させるものであると考えている。

児玉幸子「モルフォタワー」
Sachiko Kodama, Morpho Towers
鉄を彫刻し、磁場によって表面に磁性流体を流動させる新しい彫刻の原理「磁性流体彫刻」の作品化。「表面の質感がダイナミックに変化する塔」である。表面の質感は、硬い鉄から泡立つ細粒、伸びてゆく柔らかな流体へと変化し続ける。黒く滑らかな液体が、重力に逆らって回転しながら上昇し、鋭い棘の渦は、動物が呼吸するように波打つ。「モルフォタワー」は、実は、光と闇の対話の塔でもある。金属光沢を放つ塔の「見え」は、渦の流動のリズムと共に最も注意を払う部分である。
Photo: Yutaka Suzuki

永原康史+鈴木宣也+小林桂子「巻子鑑賞のための装置(東京版)」
Yasuhito Nagahara+Nobuya Suziki+Keiko Kobayashi, Media device for hand scroll (Tokyo version)
実用鑑賞性の高い日本伝統美術を、所作をともなって鑑賞するための展示装置の一。本機は「鶴下絵和歌巻」(1600年頃、本阿弥光悦書/俵屋宗達下絵、京都国立博物館蔵)を搭載しており、揮毫前の宗達の絵や、下絵のない光悦の書を見ることができる。フィラデルフィア版(2000年、光悦プロジェクト、フィラデルフィア美術館「The art of Hon’ami Koetsu」展)、岐阜版(2001年、作法プロジェクト・IAMAS、アクティブG「本阿弥光悦マルチメディア展示プロジェクト」展)を経て、今回「東京版」で三度目のリメイクとなる。和歌詠唱は、八百年続く和歌の家、冷泉家時雨亭文庫社中による。

池上高志+渋谷慶一郎「Taylor Couette Flow」
Takashi Ikegami+Keiichiro Shibuya, Taylor Couette Flow
Taylor Couette Flowは2重円筒に挟まれた流体が示す、秩序だった流れである。内側の円筒の回転速度をあげると流体は乱れ壊れていく。このプロセスは「T3からChaosへ至る道」といわれ、T3は3つの独立な流れ、Chaosは数学的に定義される乱れの構造である。このインスタレーションではRuelleとTakensのシナリオを実際に流体実験装置で作り出すが、シナリオは完全に確証されてはいない。そこで1〜3個の 流れ(T1〜T3)、乱流(chaos)をコンピュータシミュレーションで作り出し、その運動によって立体音響をつくると、視ることのできない流体の乱れのプロセスを聴覚的に再構成し、知覚できる。その音色は、カオスの基本的な方程式であるLogistic写像で創られる。

北川原温研究室(北川原温+岩岡哲夫+竹内伊代+Klaudia Biala)
「聴く建築」vol.1─音カメラによる音空間の可視化─
Kitagawara Lab. (Atsushi Kitagawara+Tesuo Iwaoka+Iyo Takeuchi+Klaudia Biala), OTO CAMERA EXPERIMENT
「聴く建築」とは、音・聴覚を主眼において、創造された空間・領域のことである。本プロジェクトでは、音環境/聴覚と空間認識との相関性に着目し、音を統合的な感覚要素として捉え、音環境/聴覚によるトータルな環境・景観=「音の景相(オムニスケープ)」の観点から、新たな空間領域形成・空間設計の可能性を追究する。東京芸術大学北川原研究室では、「聴く建築」に向けた方法論を確立するための実験的インスタレーションとして、熊谷組の開発した「音カメラ」を使用し、音空間の可視化を試みる。今回の展示では、安田講堂にて行われる対談を音カメラで撮影し、パネラーの声、壁や天井に反射する音を映像化し、工学部2号館展示スペースにて、その結果を投影する。
上映
河口洋一郎CG作品集
学生CGコンテスト受賞作品
情報学環 制作展セレクション
UMAT招待作品(Amanda Beech, Episode/Hisham M. Bizri, VERTICES)
Video Screening
Yoichiro Kawaguchi Works
The CG Contest for Students
iii exhibition
UMAT invited video works (Amanda Beech, Episode/Hisham M. Bizri, VERTICES)
